日本では空き家問題が年々深刻化しています。人口減少や高齢化、都市部への人口集中など、複数の要因が影響を与えている中で、特に地方の空き家が増加しています。この問題は、単なる景観の悪化にとどまらず、治安や防災、衛生面でも大きなリスクを抱えています。放置された空き家が増えることで、地域全体の魅力が低下し、住民にとっての生活環境が悪化します。
特に「特定空家」について、特定空家がどのような基準で指定され、どのような影響があるのか、さらにその対策について具体的に解説していますので最後まで読んでいただけますと嬉しいです。
1.特定空家とは?
空き家と特定空家の違い
まず、一般的な空き家とは、現在誰も住んでいないか、使用されていない建物を指します。しかし、すべての空き家が問題になるわけではありません。その中でも「特定空家」とは、法的に放置することで周囲に悪影響を及ぼす恐れが高い空き家を指します。例えば、建物の倒壊や衛生面の問題が懸念される空き家です。
法律上の定義
特定空家は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、次の基準に該当する空き家として指定されます。
- 倒壊の危険:建物が老朽化し、倒壊する恐れがある。
- 衛生上の問題:ゴミの放置や害虫の発生により、健康被害が懸念される。
- 景観への影響:放置された結果、地域の景観を損ねる。
- 周囲への悪影響:雑草の繁茂や不法投棄が地域住民に迷惑をかける。
これらの条件を満たす空き家は、特定空家として指定され、行政による対応が必要となります。
2.特定空家に指定される基準
特定空家に指定される具体的な基準には、以下の4つのカテゴリーがあります。
- 倒壊など保安上の危険がある状態:老朽化した建物が倒壊する恐れがあり、周囲の住民や通行人に危険を及ぼす場合。
- 衛生的に有害な状態:空き家にゴミが溜まったり、害虫が発生するなど、衛生面で健康被害を引き起こすリスクがある場合。
- 景観を著しく損なう状態:長期間放置され、周囲の景観に悪影響を与え、地域の美観や価値を低下させる場合。
- 周辺環境に悪影響を及ぼす状態:不法投棄や雑草の放置などにより、地域住民に迷惑をかけ、社会的な問題を引き起こす場合。
これらの基準は、空き家が地域や住民に与えるリスクを減少させ、地域全体の安全性と美観を保つことを目的として設けられています。
3.特定空家に指定されたらどうなる?
3-1. 固定資産税の増加
特定空家に指定されると、固定資産税の優遇措置が取り消され、税額が最大で6倍に増えることがあります。
例えば、土地の固定資産税が200万円の場合、特定空家に指定されることで税額が1200万円に増加する可能性もあるため、所有者にとって大きな負担となります。
3-2. 指導・勧告・命令の流れ
特定空家に指定された場合、自治体は以下の順序で対応します:
助言・指導:所有者に改善の必要性を通知し、改善策を提案します。
勧告:改善が行われない場合、正式に勧告が行われます。
命令:勧告にも従わない場合、法的命令が発され、強制的に改善が求められます。
行政代執行:最終的には自治体が建物の解体や修繕を行い、その費用を所有者に請求します。
4.特定空家の指定解除方法
特定空家の指定を解除するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 建物の安全性や衛生状態を改善し、指定を解除する基準を満たすこと。
- 自治体がその改善を確認し、解除の判断を下すこと。
実際の手順は以下の通りです。
- 自治体への連絡:指定を受けた場合、まず自治体に相談します。
- 改善計画の作成:自治体からの助言を受けて、具体的な改善計画を立てます。
- 改善の実施:必要な修繕や清掃を行います。
- 確認申請:改善が完了した後、自治体に確認を依頼します。
- 指定解除:改善が認められると、特定空家の指定が解除されます。
5.特定空家を防ぐ方法
5-1. 空き家を活用する
空き家を適切に活用することで、特定空家に指定されるリスクを減らし、地域社会に貢献することができます。
空き家が放置されると、その劣化が進み、治安や衛生面の問題が発生するため、積極的な活用が求められます。空き家を有効に活用するための方法を以下に詳しく解説します。
住む人を探す
空き家が長期間放置される主な原因の一つは、住む人が見つからないことです。
この問題を解決するために、空き家バンクや住宅支援制度を活用することが有効です。空き家バンクとは、自治体や民間のプラットフォームを通じて、空き家の所有者と新しい入居者を結びつける制度です。
- 空き家バンクの利用
空き家バンクに登録することで、地域の住民や他の候補者に空き家の情報を届け、新たな入居者を見つける手助けになります。特に地方では空き家の利用促進が進んでおり、空き家バンクを活用することで移住希望者や新しい住民を誘致することができます。 - 地方移住支援
一部の自治体では、地方移住を促進するために、空き家に住む人への補助金や家賃支援などの支援策を設けています。このような制度を活用することで、空き家の再利用が進み、地域経済にも好影響を与えることができます。
賃貸や売却
空き家を賃貸物件として利用したり、売却することで問題を解決する方法もあります。この方法は、特定空家の指定を回避するだけでなく、所有者にとっても経済的なメリットが期待できます。
- 賃貸物件として利用
空き家を賃貸として提供することで、安定的な収入源を確保することができます。賃貸に出す場合、リフォームや清掃を行い、住みやすい環境を整えることが重要です。また、賃貸契約時に自治体が提供する空き家に関する支援制度や税制優遇を活用することも可能です。 - 売却して所有者が変わる
空き家を売却することで、新たな所有者によって建物が適切に活用される可能性があります。売却による所有権の移転により、特定空家の指定を避けることができます。売却時には不動産市場の相場を確認し、適正価格での取引を行うことが大切です。空き家バンクや不動産仲介業者を通じて売却する方法もあります。
リフォーム
空き家をリフォームして価値を高めることで、特定空家に指定されるリスクを大幅に減らすことができます。
リフォームによって、建物の安全性が向上し、住みやすさや利便性が改善されます。以下のリフォーム方法を検討することが有効です。
- 構造的な修繕と耐震化
空き家が老朽化している場合、まずは構造的な修繕や耐震化を行うことが重要です。特に地震の多い地域では、耐震補強が求められます。建物の倒壊の危険性を減らし、特定空家に指定されるリスクを回避するためには、安全性を最優先に改善することが必要です。 - 内部の改装や設備更新
古くなった設備や内装を更新することで、住環境が大きく向上します。キッチンや浴室の改装、断熱材の追加、配管や電気系統の修理などを行い、現代的で快適な住空間を提供することができます。特に、エコ設備や省エネ技術を取り入れることで、持続可能な住宅としての魅力を高めることができます。 - 外観のリノベーション
外壁や屋根の修理、庭の整備なども重要です。建物の外観が美しく保たれていれば、地域の景観にも良い影響を与えるため、特定空家に指定されるリスクを軽減できます。また、外観の改善は周囲の住宅価値にもプラスに働くため、地域全体の美観を保つことにもつながります。
5-2. 自治体の取り組みと支援制度
自治体は空き家問題を解決するために、積極的な取り組みを行っており、所有者が空き家を有効活用できるように支援制度を整備しています。
空き家が地域の景観や治安、衛生に悪影響を与えるリスクを減少させ、地域全体の活性化を図るために、自治体はさまざまな補助金や優遇措置を提供しています。これらの支援制度を活用することで、空き家の所有者は管理や活用のコストを軽減し、空き家の有効利用を促進することができます。
- 空き家改修費用の補助制度
空き家をリフォーム・修繕して利用するための費用負担を軽減するため、自治体は空き家改修費用の補助制度を提供しています。これにより、所有者は経済的な負担を減らし、空き家の活用を進めることができます。主な補助内容は以下の通りです。
・改修工事の費用助成
多くの自治体では、空き家の改修工事にかかる費用の一部を補助する制度があります。補助金の額や対象となる工事内容は自治体ごとに異なりますが、一般的には老朽化した建物の修繕や耐震化、バリアフリー化、エコリフォームなどが対象となります。
特に耐震性の向上やエコリフォームは、近年重要視されており、環境保護や安全性の向上を目的とした改修が支援されます。
・空き家活用のための特定用途改修支援
空き家を賃貸物件やカフェ、ゲストハウスなどに転用するための改修工事も支援されることがあります。
例えば、空き家を地域資源として活用するためのリノベーションや商業施設への改装を補助する制度が存在します。これにより、地域活性化や観光業の促進を図ることができます。 - 税制優遇措置と特例措置
空き家問題を解決するため、税制面でも支援が行われています。
特定の条件を満たす空き家に対して、固定資産税の減免措置や特例措置が適用されることがあります。これにより、空き家の所有者が税負担を軽減し、積極的に空き家の活用に取り組むインセンティブが提供されます。
・固定資産税の減免措置
一部の自治体では、空き家を賃貸物件に転用した場合や、一定の基準を満たすリフォームを行った場合に、固定資産税の減免や軽減措置を提供しています。
これにより、空き家所有者が経済的に負担を減らし、改修や活用のための投資をしやすくすることができます。
・特定空家に対する税制優遇
特定空家に指定されると、固定資産税が大幅に増加するため、空き家を適切に管理・改修するインセンティブとして税制優遇措置が提供されることがあります。
たとえば、自治体によっては、空き家改修後にその状態が改善されることで、税金が一時的に軽減される制度もあります。 - 空き家に関する相談・アドバイス
空き家の所有者が直面する問題を解決するため、自治体は専門的な相談窓口を設けています。これらの窓口では、空き家の管理方法や活用方法に関するアドバイスを提供しており、所有者が適切な対策を講じるための支援を行っています。
・空き家相談窓口
空き家問題に関する相談を受け付ける窓口が自治体に設置されています。
ここでは、空き家をどのように活用するか、どのような改修が必要か、または自治体の支援制度をどう活用するかについての具体的なアドバイスが提供されます。所有者は、専門家や行政のサポートを受けながら、空き家の問題に対処できます。
6.応急危険度判定士の役割
応急危険度判定士は、地震や災害後に建物の危険度を評価する専門家です。
特定空家においても、倒壊の危険がある建物の診断を行い、適切な対策を提案します。この専門家の診断を活用することで、空き家の安全性を確保し、住民の安全を守ることができます。
ここでは詳しい解説は割愛します。
7.空き家管理サービスの活用例
空き家を適切に管理するためには、専門の管理サービスを利用するのも一つの方法です。
例えば、定期的な巡回や清掃、防犯対策を提供するサービスを利用することで、空き家の状態を良好に保つことができます。これにより、所有者は手間を減らし、空き家の管理を効率的に行えます。
詳しくは下記の記事で解説していますので、興味がある方はぜひ見てみて下さい。
8.まとめ
特定空家とは、放置されることで周囲に悪影響を及ぼす可能性が高い空き家を指します。
特定空家の基準や影響を理解し、早期に対策を講じることが重要です。空き家問題に対しては、所有者の積極的な管理と自治体の支援制度を活用することが、地域の安全や美観を守るために不可欠です。